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税金を多く払うほどお金が貯まる?

2021.12.24

こんにちは。八尾市の公認会計士・税理士の花井です。

今回は「税金を多く払うほどお金が貯まる」という、経営者にとっては一見よく分からないテーマについてお話をします。

私は経営者の方とお話をするとき、よくこの話をします。感覚的には、8割以上の方が最初は「は?」という反応ですね。

経営者の方からすると経営努力で得た利益から、税金を持っていかれるのですから、税金は少ない方がいいに決まっています。なのに、税金を払う方がお金が貯まるといわれてもピンと来るはずがありません。私も一人の経営者として、納税者としてその気持ちは十分に理解できます。ただ、専門家だからこそ理解できる部分もあり、経営者の皆さんには会社を成長させてもらいたいので、今回はこのテーマについて書きます。

では、説明します。

【具体例】

A社の今期の利益は税引前で1,000万円になりそうです。このままいくと税金は300万円になります(税率は簡便的に30%とします)。そこで社長は追加で200万円の経費を使うことにしました。ここでは利益はすべてお金が増えると仮定します。

① 経費を使わなかった場合

1,000万円の現預金が増えますが、税金を300万円支払うので、手元に増えたお金は700万円になります。

② 経費を使った場合

利益が800万円になるので税金は240万円になり、60万円の節税効果がありました。手元に残るお金は800万円の利益から240万円の税金を支払うので、560万円になります。

 

【解説】

ほとんどの経営者はまず60万円税金が安くなったことに大喜びします。でも見て下さい。手元に増えたお金は700万円から560万円に減っています。

基本的に経費の本質は投資です。例えば人件費は人への投資。交際費や広告費は未来への投資。事務用品費や備品代などは職場環境整備に対する投資と考えることが出来るでしょう。

投資はリターンを得るためにするものです。人やモノや未来や環境整備などに投資をし、その結果として会社に利益が増えるから投資をするのです。

でも、このような投資って、一定のビジョンのもとに計画的にするものであって、決算前に急に思いついてすることは少ないですよね?

ではここで、200万円の追加経費が、結果として有効なリターンを生まなかったとしたら、言い換えると、税金を安くしたいがためにあまり考えずに支払った、結果として無駄な経費だったらどうしますか?

200万円の経費はすでに使っているのでお金は会社から外に出て行ってしまいました。でも、その分税金は60万円安くなったのでプラスになります。つまり、200万円出て、60万円戻ってくるので、結果として140万円の損をしたことになります。言い換えると、60万円をもらうために200万円を捨てたようなものです。健康になるためなら病気になってもいいというくらいのレベルです。

ここでほとんどの経営者がこう言います。

「200万円の経費は必要なものだった」

それはその通りだと思います。誰でも自分の意思決定は正しかったと信じたいものです。でも今回のケースは結果としてその経費が無駄だった場合の話です。

そして無駄だったかどうかが判明するのは、すぐではなく、少し時間が経ってからです。そして、そのころにはすでにその経費を支払ったことすら覚えていない可能性もあります。

「成果が出なかった」=「無駄」ということでは決してありません。経営判断として投資すべきという判断をし、社内一丸となって本気でチャレンジするための経費で、でも結果として利益という形では成果が出なかった場合、これは「無駄」ではありません。チャレンジをしたということ、この方法では成果が出ないということが分かったという点で、非常に大きな意味を持ちます。目に見えない成果が確実にあります。

ここでいう「無駄な経費」とは、後から思い返したときに、「ほんまにいらんかったな」と思うようなものです。そしてこれは私を含め経営者自身が思っているより多いものです。

もしその無駄な経費を使わなければ、たとえ税金を支払ったとしても手元にもっとお金が残っていたはずで、利益が出ていると銀行からの評価も良くなるので、新しい投資をしたいときに銀行からお金を借りやすくなります(スケールしやすくなります)。するともっと利益が出て、もっとお金がたまるといういいループに入ります。これが経営無双状態です。

実際、節税のために利益を少なくした結果、銀行からお金をあまり借りれずに、チャンスを逃してしまうケースは思っている以上に多いものです。

で、感覚的には最初にこの説明をして心底理解される経営者は大体半分くらいという印象です。それくらい税金を出来るだけ少なくしたいという経営者の願望は強いものです。

ですので、私は経営者の方とお会いするときは、お酒を飲みながらでも、何回でもこの話をしています。お客様には本当にいい会社になってもらいたいですからね。

私のことは嫌いになっても、税金のことは嫌いにならないでといったところでしょうか。少し違いますかね。。。税金アレルギーを克服するのは難しいです。

 

【さいごに】

節税が良くないと言っているわけでは決してありません。経費を節約して質素倹約で経営をしましょうとも言っていません。むしろ逆です。

必要な投資(経費の支出)は積極的にどんどん行って、必要な節税をしたうえで、結果として出た利益に対しては胸を張って税金を支払って、出来るだけ多くのお金を手元に残して、来たるチャンスに備えたいものです。

でも、安心してください。

無駄ではなく、お金も貯まる節税方法はありますよ。ではまた後日。